Badia a Coltibuono

キアンティの原点を今に伝える修道院ワイナリー、Badia a Coltibuono

トスカーナを代表する銘醸地として世界中に知られるキアンティ。その長い歴史の中でも、特別な存在として知られているのが、Badia a Coltibuono(バディア・ア・コルティブオーノ)です。

ワイナリー名の「Badia a Coltibuono」は、“豊かな収穫の修道院”を意味します。その名の通り、1051年にベネディクト派修道院として、現在のガイオーレ・イン・キアンティに建立されました。

キアンティ地区でも最も古い歴史を持つワイナリーのひとつであり、約1000年にわたり、この土地とともに歩み続けています。

そして今日、バディア・ア・コルティブオーノ社は、4種類ものキアンティ・クラッシコを手掛ける、他に類を見ないキアンティ・クラッシコのスペシャリストとして知られています。

“キアンティ”という名前の起源に深く結びつく土地

バディア・ア・コルティブオーノ社のエステートは、キアンティ地区ガイオーレ村でも最も標高の高い場所に位置しています。

約924ヘクタールに及ぶ広大な敷地の大部分を占めるのは、美しい森。その森の中には、エトルリア人の聖地として知られるチェタムラ・デル・キアンティが存在しています。

近年、この遺跡において、キアンティの歴史とブドウ栽培に関わる重要な発見がありました。トスカーナ州遺跡保護団体とフロリダ大学の研究チームにより、「キアンティ」という言葉が、すでにエトルリア人によって使われていたことが明らかになったのです。

また995年には、修道士たちがモンティ・イン・キアンティを含む渓谷一帯を「キアンティ渓谷」と呼んでいた記録も残されています。

キアンティ発祥の場所は、ここガイオーレにある。

この土地に根差し続けてきたことこそ、バディア・ア・コルティブオーノの大きな個性のひとつです。

4種類のキアンティ・クラッシコを生み出す、唯一無二の存在

数あるキアンティ・クラッシコ生産者の中で、バディア・ア・コルティブオーノ社が特別な存在である理由のひとつが、4種類のキアンティ・クラッシコを手掛けていることです。

スタンダードとなる「キアンティ・クラッシコ」、より深みを備えた「キアンティ・クラッシコ リゼルヴァ」、親しみやすさと熟成の魅力を兼ね備えた「RS」、そして、古代品種を取り入れた「Cultus(クルトゥス)」。

それぞれ異なる個性を持ちながらも、その根底には、“本来のキアンティらしさ”を表現するという哲学が息づいています。

そのバックボーンを支えているのが、マサル・セレクションによって守り継がれてきたサンジョヴェーゼです。

バディアのサンジョヴェーゼは、標高270〜300mに位置する石灰粘土質土壌の畑で栽培され、土地の個性を映し出す存在として大切に守られてきました。

土着品種とともに描く、“本来のキアンティ”

バディア・ア・コルティブオーノのワインを特徴づけるのが、サンジョヴェーゼだけに依存しない、多様な土着品種への深い理解です。

サンジョヴェーゼに加え、カナイオーロ、チリエジョーロ、コロリーノ、マンモロ、フォリアトンダ、マルヴァジア・ネーラ、プニテッロ、サンフォルテといった土着品種を栽培しています。

さらに近年では、一度姿を消しつつあった品種も再導入し、それぞれの個性を丁寧に見極めながらワイン造りに活かしています。

これらの品種がサンジョヴェーゼと調和することで、バディア・ア・コルティブオーノ社ならではの、類稀な個性が生み出されているのです。

キアンティ地区でいち早く取り組んだ、有機農法への転換

1980年代半ば、バディア・ア・コルティブオーノは除草剤や殺虫剤の使用を抑えた、より健全なブドウ栽培へと舵を切りました。

そして1985年、キアンティ地区で最初に有機農法への転換を開始。2000年の栽培シーズンから完全にオーガニックへ移行し、必要な転換期間を経て、2003年ヴィンテージからI.C.E.Aによるオーガニック認証を取得しています。

以降、自社畑のブドウから造られる「バディア・ア・コルティブオーノ・ライン」は、すべてオーガニックワインとしてリリースされています。

また、ブドウ栽培では、生物多様性を高めるためのカバークロップや堆肥化を重視。自然との調和を大切にしながら、デリナット・ガイドラインに沿った持続可能な農法を実践しています。

近年の気候変動にも細心の注意を払いながら、土壌の健全性とブドウの品質、そして畑で働く人々や環境を守ることを大切にしています。

自然との調和を目指した、“要塞”のような醸造所

1997年、モンティ・イン・キアンティに新たな醸造所が建設されました。

その外観は、周囲の自然環境との調和と保全を意識した“要塞”のような造り。醸造においては、ブドウへ余計なストレスを与えないグラヴィティ・フロー・システムが採用されています。

長い歴史を受け継ぎながらも、より良いワイン造りのために技術革新を取り入れる姿勢は、バディア・ア・コルティブオーノ社の哲学そのものです。

ストゥッキ・プリネッティ家が受け継ぐ、革新と継承

現在のバディア・ア・コルティブオーノとストゥッキ・プリネッティ家の歴史は、1846年に始まります。

フィレンツェの銀行家グイド・ジュンティーニと、ピエロ・ストゥッキ・プリネッティの曾祖父がこの土地を購入したことから、家族によるワイナリーの歴史が始まりました。

第二次世界大戦後には、ピエロ・ストゥッキ・プリネッティの手腕により高品質なワイン造りを推進し、国内外で確固たる名声を築きます。

現在は、ピエロの子どもたちであるエマヌエラ・ストゥッキ・プリネッティと3人の兄弟がオーナーとしてワイナリーを支えています。

1980年代半ばからマーケティング担当として経営に参画したエマヌエラは、料理研究家でありメディチ家の血を引く母ロレンツァ・デ・メディチの料理本出版もサポート。その料理本は現在、多言語に翻訳されています。

さらに2000年には、女性として初めてキアンティ・クラッシコ協会会長に選任され、任期中は積極的な活動を行いました。

そして2026年には、外部からCEOを招聘。伝統を守りながらも、外部の専門性を取り入れることで、変化を続ける市場に呼応したワイン造りに取り組んでいます。

セラーでこそ理解できる、時間が育むワイン

バディア・ア・コルティブオーノ社を深く理解するためには、セラーの訪問とオールドヴィンテージの試飲は欠かせません。

何世紀にもわたり、その特性を保ち続けてきた場所で眠るワインたちは、この土地が持つ時間の厚みを静かに物語っています。

ワインは単なる飲み物ではなく、土地の歴史や記憶、人々の営みを映し出すもの——。

バディア・ア・コルティブオーノ社は、約1000年にわたりキアンティと共に歩みながら、“本来のキアンティとは何か”を問い続けてきた存在なのです。

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「1051年から続くワイン造り」