トレンティーノ アルト・アディジェ州

ワインボトルに、ドイツ語とイタリア語が併記されている

「ドイツ人以上にドイツ的」と言われているアルト・アディジェに住む人々は、伝統を重んじ、几帳面で勤勉な人が多いと言われています。

イタリアとドイツ、オーストリアを結ぶ交通の要所としてローマ時代から栄え、中世以降は聖俗両方の権力を行使するトレント司教公により統治されました。宗教改革に対抗するために開かれたトレント公会議(1545年-1563年)はあまりにも有名です。その後、ナポレオンの支配を経て、ハプスブルグ領となり、第1次世界大戦後にイタリア王国領となりました。

ドロミーティ山塊は3,000mを超す峰々が続き、州のほとんどが山岳地帯で、森林が土地の70%以上を占め、耕作可能な土地が少ないですが、ブドウ畑は標高200m~1300mに広がっているので、それぞれの標高に適した品種を栽培することができます。

南には、ガルダ湖があり、その周辺は温暖な亜地中海性気候でオリーヴなども見られます。アディジェ川中部の渓谷は亜大陸性気候で雨が少なく、リンゴの栽培で有名です。さらに上流に行くと大陸性気候、より北へ進むとアルプス性気候になり、気候も変化に富んでいるのも大きな特徴です。

トレンティーノ・アルト・アディジェの安心感のあるワイン

住民の性格を反映して、ワインもとても几帳面に造られ、安定感が抜群です。生産者協同組合の造るワインの品質がいいのもこの州の特徴です。

白ワインは香り高く、クリーンかつフレッシュな味わいで、清らかな酸を持っています。昔は全州で同じような品種が栽培され、ひとつのワイナリーがいくつもの単一品種ワインを造ることが普通でしたが、近年はそれぞれの地区に適した品種が徐々に明らかになってきたので、地区ごとの品種の棲み分けが進んでます。

ボルツァーノからブレッサノーネにかけて北東へ延びるイサルコ渓谷はミュラー・トゥルガウ、シルヴァナー、ケルナーなどのドイツ系品種、ボルツァーノからメラーノにかけて北西に伸びるヴェノスタ渓谷はリースリング、ボルツァーノの北西にあるテルラーノではピノ・ビアンコ、トレントの北にある斑岩土壌のチェンブラ渓谷はミュラー・トゥルガウといった具合です。

赤ワインは、アルト・アディジェ地方ではデリケートなスキアーヴァ、濃厚で豊潤なラグライン、トレンティーノ地方では繊細なマルツェミーノ、濃厚な果実を持つテロルデゴが代表的です。アルト・アディジェ地方はイタリアを代表するピノ・ネーロの産地で、エーニャ(Egna)に近いマッツォン(Mazzon)の畑が最高とされていて、ヴェノスタ渓谷のピノ・ネーロも評価が高いです。

近年、トレンティーノで成長が著しいのが、瓶内二次発酵によるDOCトレントです。「山のスパークリングワイン」と呼ばれ、シャープな酸を持ち、厳格で、みずみずしい味わい、さらに長期熟成能力の高さも評価されています。

果実味中心のフランチャコルタに対して、トレントはミネラル中心で、その個性は対照的です。

イタリア料理があまり食べられていない!?

歴史背景から、食文化はオーストリアの影響が強く、むしろイタリアの影響が少ない州として知られています。オーストリアで有名な燻製した生ハムの一種であるスペック(Speck)は、アルト・アディジェでも名産で、地元のひとたちのおつまみとして定着しています。

さらに、イタリアと言えば「パスタ」ですが、パスタはほとんど食べられず、スープが中心なのもこの州の特徴です。トレンティーノ地方の料理は素朴で、質素で温かみのあるもの、そして寒い地方なので脂肪分がたっぷりな料理という側面もあります。

肉は豚、ジビエが好まれ、パン団子であるクネーデルKnödel(イタリア語ではカネデルリCanederli)はコンソメに浮かべたり、バターとサルヴィアのソースで食べたりすることが多いです。また、トレンティーノではポレンタもよく食されています。

州はヨーロッパ有数のリンゴの産地で、リンゴ入りリゾットのリゾット・コン・レ・メーレ(Risotto con le mele)、豚とリンゴを一緒にローストしたマイアーレ・アッラ・トレンティーナ(Maiale alla trentina)なども有名で、リンゴ、干しブドウ、松の実をロールしたストゥルデル(Strüdel)は代表的お菓子でもあります。

出典・引用・参考資料/

『プロフェッショナルのためのイタリアワインマニュアル イタリアワイン2018~2021年版』発行所/株式会社ワイン王国 監修者/宮嶋 勲 協力/日欧商事株式会社