8月になるとイタリアの街から人が消える理由

8月になるとイタリアの街から人が消える理由

なぜ8月になるとイタリアの街には人がいなくなるのか?

8月中旬にイタリアの都市を訪れると、「みんなどこへ行ってしまったのだろう?」と不思議に思うかもしれません。

いつもは活気にあふれている街並みは静かになり、家族経営のお店の多くは1~2週間ほど店を閉めます。ショーウィンドウには、「Chiuso per ferie(休暇のため休業)」という手書きの張り紙が並び、まるで国全体が一時停止ボタンを押したかのような雰囲気になります。まるで人々が一斉に姿を消してしまったかのようです。

その理由は、毎年8月15日に祝われる「フェッラゴースト(Ferragosto)」にあります。

公式には祝日の一つですが、多くのイタリア人にとってフェッラゴーストはそれ以上の存在です。夏のハイライトともいえる特別な日であり、家族や友人とゆっくり過ごす絶好の機会でもあります。

行先は、やっぱり海!

多くのイタリア人にとって、フェッラゴーストといえば海がお決まり。

朝早くから、車にはパラソルやタオル、子どもの遊び道具、そして大人数で楽しめるほどの食べ物が積み込まれ、家族連れはお気に入りの場所を確保するため海へ向かいます。

もしフェッラゴーストの日にビーチを訪れるなら、一番難しいのは泳ぐことではなく、砂浜の空いている場所を見つけることかもしれません。

ビーチは海水浴を楽しむ人やビーチバレーをする人、のんびり昼食を囲む人々で埋め尽くされ、一年でも特ににぎやかな一日となります。海辺の町によっては、夜になるとライブ音楽や花火でお祝いするところもあります。

それとも山へ?

もちろん、誰もが真夏のビーチを目指すわけではありません。

特に北イタリアでは、涼しさを求めて山へ出かける人もたくさんいます。混雑した海辺とは対照的に、山では澄んだ空気の中でハイキングを楽しんだり、家族とピクニックをしたり、木陰でのんびり過ごしたりと、それぞれ思い思いの時間を過ごします。

松の木の香り、澄み切った空気、そして心地よい風。そんな自然に囲まれながら過ごすフェッラゴーストも、イタリアらしい夏の過ごし方の一つです。

家族で囲む、ゆったりとした昼食

もちろん、遠出をしない人もいます。

多くのイタリア人にとって、フェッラゴーストで大切なのは「どこへ行くか」ではなく、「誰と過ごすか」です。

自宅や田舎の家、あるいはアグリツーリズモ(農村や農場などで過ごすこと)などで、家族や友人とゆっくり食卓を囲むことが、この日の何よりの楽しみです。

夏の日差しが降り注ぐ中、ランチは何時間も続くことも珍しくありません。料理が次々と運ばれ、旬の食材を使った料理や、デザートには甘く熟した桃やスイカが並びます。会話も料理と同じように尽きることなく続き、時間がゆっくりと流れていきます。

そんなひとときが、「大切な人と過ごす時間こそが一番の贅沢」ということを改めて思い出させてくれるのです。

イタリア最大の「夏の大移動」

フェッラゴーストの最も興味深い点は、この一日が国全体の雰囲気を一変させることです。

高速道路は休暇へ向かう車で混雑し、駅には旅行客があふれる一方、多くの都市は普段では考えられないほど静かになります。

初めてイタリアを訪れる人にとっては、これほど多くのお店が一斉に閉まっている光景は驚きかもしれません。しかし、イタリアではそれがごく当たり前の夏の風景です。

フェッラゴーストは、仕事をひと休みし、イタリアの夏を心ゆくまで楽しむための特別な時間なのです。

もし8月中旬にイタリアを訪れる機会があれば、街がいつもより少し静かでも心配はいりません。

きっと人々は、海や山、あるいは食卓を囲みながら、大切な人たちとフェッラゴーストを楽しんでいることでしょう。

TEXT/ITALIAKARA

※この記事は、イタリア文化のスペシャリストの監修がされています。